‥‥ … … ‥ ‥‥
10分ほどすると、自転車は川原添いを走りはじめた。
きらきらと、泡のように光が川面に浮いている。
強い風に川原の草がなびく。
なんて、瑞々しい緑色。
春の息吹に満ちている。
「広香、着いたよ」
自転車が、ゆっくりと停まった。
矢楚が左足を地に着けた。負担にならないよう、広香はすぐに立ち上がった。
矢楚の背中にさえぎられていた前方の景色が、一気に拓ける。
透き通るような青空に、大きく手を広げたさくら色。
ため息が漏れた。
しだれ桜の大木。
川原の土手に咲き誇っていた。
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