矢楚は、今日もクラブの公衆電話から掛けている。 『広香。今日、会える?』 矢楚は、毎日そう聞く。 会えないと分かればコインを足して、昨日の電話の後から今までにあったことを、広香に話して聞かせるのだ。 「うん」 『え!?』 「会える」 『ほんと?体調いいの?』 矢楚は、広香が体調を崩して会えないのだと思っていた。 広香もあえて、それを否定していなかった。