母は仕事、柊太は保育園に行っている。 静まり返った室内で、時計の秒針が存在感を強めていた。 電話が鳴った。 くるころだと分かっていたのに、心臓が跳ね上がり、ドクドクと強く早く鼓動をはじめた。 広香は小さなテーブルに置かれた電話機の前に行くと、正座をして、三コールほど鳴るのをそのまま眺めていた。 鼓動が胸の痛みに変わる。 受話器をとって、月島です、と言った。 その声の響きに、 矢楚にキレイな声だと思われたい自分の未練がましさを感じて、 広香は思わず目を閉じた。