アパートの押し入れの襖(ふすま)に、 真新しい高校の制服が掛けられている。 紺色のブレザーに、緑と赤のチェックのスカート。 金ボタンと、左胸のエンブレムに使われている金糸が、部屋の光を反射していた。 その輝きは、広香へある問いを放っているように感じられる。 いまは広香の手の中にあって確かに輝いているあの星を、 どうするつもりなのか、と。 矢楚の引退試合の途中で、逃げるように帰ってから、十日が経っていた。 明後日は入学式だ。