遠くへ行く人だと、そんな予感は前からあった。
矢楚が目指す高みを、広香はいま初めて知った。
それは、広香の予想を遥かに超えていた。
木綿子も知也も、同様だろう。二人とも、遠藤が話し終えたあと、ただ黙り込んでいた。
いつも一緒にいる者が、その人の全てを知っているわけではない。
恋人であっても。
広香は、さっきまでの熱狂が嘘のように、頭の芯が氷のように冷えて、全身に悪寒が走った。
木綿子は何も言わず、広香の肩を抱いてくれた。
涙が出そうだった。
グラウンドに吹く強い風が瞳の水分を吹き飛ばしてくれる。
ピッチに目をやると、もう選手はポジションについている。
後半戦が始まるのだ。


