サッカー部の大半は、喉の渇きを潤しに、自販機へ走っていった。
運動音痴の広香、バスケ部の木綿子と知也は、遠藤に前半戦の総括と解説をしてもらっていた。
「後半戦では、矢楚は直接ゴール狙ってくると思う」
遠藤の予測に、木綿子が疑問をぶつける。
「矢楚がやってるMFって、攻めることもあるの?司令搭になってゲームを回すとかは聞いたことあるけど」
それを知也が受けた。
「いや、MFにも色々あるんだ。攻撃的MFとか、守備的MFとか」
指が汚れるのもかまわず、遠藤は指でフォーメーションを土に描いて説明してくれた。
「ピッチの中盤にあってゲームの流れを決めるのが、MFの役割なんだけどね。
前半戦の矢楚は、ほら、この位置にいたね。
相手ゴールに向かって1列目がFWで、その後ろ2列目のMFの右サイド。
でも、矢楚が一番やりたいのは、ここ。
1列目のFWと、2列目のMFの間、いわば1.5列目に立つ半分フォワード的なMFなんだ」
遠藤は、描いていた手を止め、顔を上げて広香たちを見る。
「しかもね、矢楚が目指しているのは、ファンタジスタと呼ばれるプレーヤーになることだよ」
ファンタジスタ……。
広香が、初めて聞く言葉だった。


