ピッチで風を切り、ボールを巧みに操り、大きなジェスチャーでチームメイトに指示を出す、
そんな矢楚には、風格すらあった。
キャプテンの黄色い腕章のせいばかりでなく、矢楚のピッチでの存在感は他を圧倒している。
「ほとんだ。自由に戦ってるな」
遠藤がつぶやく。
両チーム、得点のないまま、前半が終わった。
ハーフタイム。
「自由って?」
広香は、遠藤に尋ねた。
「ああ、あのね。相手チームは細かくパスを回して、機能的なサッカーをしているの、分かるかな?
いま、日本ではそれが主流なんだよ、戦術重視のプレー。
矢楚のユースチームも、オレが今まで観てきた試合はそういうやり方なんだけど。
今日は、選手が機能の一つになるというより、伸び伸び動いてるんだ。
ロングシュートも積極的に打ってるし」
広香は、矢楚が試合開始のときにチームメイトに呼び掛けた言葉を、思い出した。
『自由に!楽しもう!!』


