遠藤は、信じられない!何で!と、大げさな表情で言った。
「まずいよ。ピッチに立つ矢楚を観たら、もっと好きになると思う!」
まっすぐな表現に、いつもなら照れてしまう広香も、少し胸を打たれる。
「ピッチって何?」
「サッカーでは、グラウンドをピッチって言うんだ」
「そうなんだ。遠藤くんこそ、矢楚のことが好きみたい」
遠藤は、指で鼻を擦りながら100パーセントで肯定した。
「うん。好きだね~。サッカー部に何度か来てもらって、レクチャーしてもらったことあるんだ。
矢楚はさ、クラスでも、気さくでいい奴だけどさ。
弱小チームのオレたちにサッカーを教えてくれる時にね。
ぜーんぜん、威張らないんだ。謙虚なんだけど、自信もある。ストイックだけど愛情深い。そんな感じ。
技術もすげーんだけど、人間として、かっこいいんだよ」
思い出しつつ語る遠藤の横顔に、広香の知らない矢楚が宿っていた。


