遠藤は凍り付いた顔で聞いた。
「え、まさか、知也と?」
広香は驚いて手を振る。知也も軽く否定した。
「オレじゃ、ないよ」
二人を代わる代わる見た遠藤が、はっとした様子で小さくつぶやいた。
「え 、もしかして、矢楚?」
今度は否定しない広香を、サッカー部のどよめきが包んだ。
がくん、と肩を落とした遠藤を、仲間の一人が大げさに抱いた。
男子の中でも小柄の遠藤は、顔のパーツも小振りで淡泊な顔立ち。黒々とつやのある瞳が、リスのようで愛らしい。
遠藤は、しょんぼりとつぶやいた。
「オレ、秘かに、月島に憧れてたんだ」
その様子を上から眺めていた長身の知也は、実に落ち着き払った様子で言った。
「もう、秘かじゃないけどな。バレたうえに振られちまったんだ」
男子はどっと笑った。
木綿子はこぶしで、軽く知也の腕を、とんとん、と叩いた。こらこらといった感じで。
ただ注意はしつつも、冷たいようで気が回っている知也の対処を、木綿子は実のところ認めているように見える。
こういう場面では、あっけらかんと笑い飛ばすほうが、みんな気まずくなくていいのだ、と広香も思った。
それは遠藤くんにとっても。


