「県外の、どっかサッカーの有名な高校に行っちゃうものと思ってた、から。よかった」
矢楚の目をまっすぐに見て言う。
自分のことを話すときより、ずっと気持ちのこもった話し方だ。
よかったって?
苛立ちと困惑がいり交じった複雑な感情が湧きだしてくる。
矢楚は思わず目をそらした。
落ち着け。
とにかく、冷静に話さなきゃいけないんだ。
矢楚が深呼吸しかけたとき。
「お父さんに、話した?私に会うこと」
「えっ 」
矢楚は、不意を突かれて柴本亜希を見た。
何もかも見透かすような、怯むことのない強いまなざしがそこに待っていた。
「と、いうより。お父さんに直接聞いてもないんでしょ。
お父さんと私のこと」
言い当てられて矢楚は言葉を失った。


