「領収書を、見つけたらしいの、ビジネスホテルのだけどね。
お母さんが問い詰めたら、ほのめかしたらしい、愛人がいること。その夜、お母さんは手首を切ったのよ」
美鈴が鼻をすすった。沙与は美鈴のそばに移動してその肩を抱いた。
美鈴が涙声でつぶやく。
「お母さん、お父さんのこと、すごく好きだったんだね」
手首を切って倒れていた母を見つけた時のことを、矢楚は思い出していた。
あの時、母さんは、お父さんを驚かせたかっただけだよ、と言った。
強がりでそう言ったと思っていたけど、違ったんだ。母さんは命を断つつもりで手首を切ったんじゃない。
母さんは賭けたのだ。
そこまでやれば、父さんが目を覚まして帰ってくると信じていたのではないか。


