広香は渡されたペットボトルを見たとたんに、喉の渇きに気付いた。
キャップをあけ、くちをつけた。少しぬるくなったスポーツドリンクは、びっくりするほどおいしい。
そしてなぜだろう。飲み込むとすぐ、体の中に力がみなぎってきた。
「大丈夫?」
藤川矢楚は、ストレッチの手を休めて、さっきのお気楽な様子とは打って変わった真面目な声で聞いた。
矢楚の真剣な眼差しは、広香の瞳に光のように差し込んでくる。
瞳から入り込んで心の底まで明るく照らす、それは不思議な心地よさがあった。
「だいじょうぶ」
広香は自然にそう返事した、ひどい鼻声で。
その声に藤川矢楚が笑って、広香も吹き出した。


