さっきまで、 広香の腕の中で満身創痍だった鳥は、 わずかに安らいだだけで、すぐに飛び立とうとしている。 自分がこの人を守ろうなんて、おこがましいとすら広香は思った。 向かい風を力にして、 どこまでも、どこまでも、飛びゆく、 強い魂。 それが、矢楚なのだ。 広香は、これまでただ眩しく感じていた、 そんな矢楚の崇高な魂を、 今、突然、せつないと思った。