光の子





さっきまで、
広香の腕の中で満身創痍だった鳥は、

わずかに安らいだだけで、すぐに飛び立とうとしている。



自分がこの人を守ろうなんて、おこがましいとすら広香は思った。


向かい風を力にして、
どこまでも、どこまでも、飛びゆく、

強い魂。


それが、矢楚なのだ。  



広香は、これまでただ眩しく感じていた、
そんな矢楚の崇高な魂を、

今、突然、せつないと思った。