「私、何もしてないよ」 矢楚は、広香の髪を撫でながら、さらりと言った。 「広香は、俺を、男にしてくれるんだ」 広香の胸で何かが軋(きし)んだ。 「甘えん坊の末っ子なんて、もう辞めだ、辞めだー!」 矢楚は、冗談めかして笑った。