家の敷地から道へ出ると、広香はそのまま歩きだした。
この町に越してきたばかりの広香には、行くあてがない。
はじめは、学校に行こうかとも思った。 楽しげに無邪気に過ごす生徒達が、いっぱいいるだろう。
うらやましくて、余計に辛くなる気がした。また、部活をしてる木綿子の姿も浮かんだが、今の気持ちを木綿子に話せる気がしなかった。
途方に暮れて、どれだけ歩いたろうか。
歩道から見下ろせる広大な窪地に、鮮やかなグリーンの芝が広がっているのが見えた。
小さな子どもを連れた若い母親たちが談笑したり、
高校生くらいの若いカップルが寝そべっている。
ちょっとした運動をする人もいたが、みな広々とした場所に点在して、互いの存在が邪魔にならない。
青々と輝く芝生に引き付けられるように、広香はその広場へ下りていった。


