修学旅行へ出発する朝は、早い。 広香は、薄青の朝の靄(もや)の中、静かにたたずむ校舎を歩いていた。 集合場所の体育館には、すでに興奮した生徒たちが集まっている。 広香は靴を脱いで体育館に入ると、すぐに矢楚の姿を探したが、見当たらなかった。 かわりに、木綿子と知也が何やら話しているのが目に入る。 瞬間的に、いやな予感がした。