耐えられずにうつむいた矢楚は、閉じた目を開け、
ふと視界に入った広香の膝に、何気なく手を触れた。
「広香、足が氷みたいだ」
「ほんと。矢楚の手、あったかい」
広香は気にも留めていない口ぶりだが、
矢楚は、しまった、と悔やんだ。
秋の終わりの日暮れは早く、放課後からクラブへ行くまでのわずかな時間にも、あっという間に辺りは冷えていく。
矢楚は、広香の足をさすって温めながら考えた。
冬の足音に追われながら、いつまでこうして会えるだろう。
「広香、もうそろそろ別の場所、探さないといけないね。
風邪をひかせちゃう」


