「あのさぁ、俺らって十五だよ?
お前はたまに、同い年と思えんときがあるよ。
広香もだけど、特にお前は、自分に厳しすぎる。
広香の前では、弱い自分を見せてもいいんじゃね?」
「でもね、知也。
俺らさ、まだガキだから。もたれ合ったら、二人ともつぶれる。
お互いが強くなって、自分で乗り越えるしかないことが、今はあるんだよ」
知也はまた少しだけ、矢楚の顔を眺めると、
鼻から、すーっと息を吐いて、机に頬杖をついてしみじみと言った。
「お前さー。
絶対、立派な大人になりそう」
「え?…。
うーん、立派な大人ってだけだとね…。
プラス、魅せるサッカー選手になるから」
口に出したら、心に小さく勇気の火が灯る。
そうだ。
俺には、サッカーがあるんだ。
父さんのことでぐちゃぐちゃしてる場合じゃない。
さっさと乗り越えるんだ。