「僕が、今回の大会で力を発揮できたのも、先生方や、学校のみんなの応援のおかげです!ありがとう!」
そこまで言うと、ふと照れ臭そうに頭をかいて続けた。
「優秀なプロ選手になれるよう、これからも努力します!以上」
教師たちから、「がんばれよ!」と声援が響いた。
一礼すると、騒いでいる仲間にあどけない笑顔を向け、藤川矢楚は列に戻っていった。
「あの子、なんだかみんなに好かれてるね」
広香は後ろに立つ木綿子に言った。
「矢楚は、一目置かれてるんだ。
夏休みはブラジルに行ってたよ。
サッカーの親善のなんたらに選ばれて」
「すごい」
「お父さんがプロのサッカー選手だよ。
地元チームのMF(ミッドフィルダー)。
最近は、故障してスタメンから抜けてるけど」
「スターの子、なんだ」
広香は、あの子を眩しく感じたのは、きっとその育ちの華やかさのせいだったに違いない、そう思って、なぜだか少しだけ、がっかりした。


