「荷物をまとめて、家を出ようと思う」
突然のことで、広香は言葉が出なかった。ましてや、健人の奥さんの話を詳しく聞いたのも初めてだった。
母と柊太の存在が、この三年、どれほどその女性(ひと)を苦しめたろうか。
今まで、考えないようにしてきた。しかし、今、健人から話を聞いてしまったことで、その女性の輪郭が浮かび、広香は急に罪の意識に襲われた。
「それでね。
まだきちんと離婚できていない状態だけど。もし、広香ちゃんが許してくれるなら。一緒に暮らしたいんだ。
お母さんと、柊太と、広香ちゃんと」
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