「ああ、映画の時だけ、ジャイアンいい奴だよね」 なら、まあ、いいか。 健人はニカッと笑った。 広香たち家族にとって、健人の存在ほど、心強く頼もしいものはなかった。 だからこそ。広香はさっき、怖れたのだ。別れを告げるために待ち伏せたのか、と。 「でも、よくよく考えたら、頼もしくて男気あるなんて、俺にはもったいない評価だね」 「そんなことないよ、どうして?」 「柊太の父親なのに、宙ぶらりんで、もう三年も過ぎた」 広香には、返事のしようのない話しだ。 思わず目を伏せる。