二人が体育館に着いたときには、すでに生徒のほとんどが整列して座っていた。
出席番号順に並び、担任が出欠を確認し終わったところで、木綿子が広香の後ろにすっと入り込む。
やがて校長が舞台にあがり、演台で話しだした。
「サッカーのクラブに所属し、先だってのU12の全国大会に出場した、わが校の藤川矢楚(やそ)くんが、大会の最優秀選手に選ばれました」
隣のクラスを中心に、学年全体からわぁっと歓声があがった。
普段は熱のない白けた学年なのに、と声の上がったほうを広香は眺めた。
ミント色のTシャツを着た精悍な顔つきの少年が、やんやと祝福し騒ぎたてる男子に囲まれている。
広香は、その少年があまりに明るい光りに包まれていたので驚いた。
まるで、彼自身が金色に輝いているようで。
よく見れば、体育館の二階の窓から、朝の陽光が彼の上に降り注いでいたのだった。


