「今日はだいぶね。
ほら美波。彼方が困ってるよ。まずは中に入りなさいな」


昔から農作業で足腰を酷使していたという祖母は、ここ数年、めっきり小さくなって、腰痛に悩まされるようになっていた。
今でも家のことはなんでもこなしてくれるけれど、やはり時折、ひどく辛そうな時がある。


不甲斐ない。

その祖母に、好むと好まざると、心配をかけ続けている自分たちに、カナタは心の底からため息をついた。


「……ぅわ!ミナ、待って!わっ!!」


ガッシャーン


部屋の中へと消えた祖母の背中を追うように、ミナが、絡ませた腕を強く引く。と、カナタはバランスを崩して、その足に派手に自転車をひっかけた。


「っつう」


咄嗟に手を伸ばして体を支えたものの、タイヤのフレームに当たった脛が痛む。


「あっ!!……ごめんっ」


勢い余って、ミナまで転ばせてしまったらしい。
ふと気づけば、四ツ這いに倒れたカナタの顔のすぐ下、驚きに目を大きく見開いたミナの顔があった。