「ちょっ!!ミナ!!」


これも、もう3ヶ月、ほぼ、毎日のこと。
なのに。
いまだに慣れることができず、赤面してしまう。


「おにいちゃん」


耳元で、鈴をふるわせるような、かすかな声がした。
幼な子のように頼りない響き。

ミナのしゃべる、唯一の言葉。


だけど実際のところ、年齢で言えば、1歳しか違わない。
身長で言えば、4cmしか違わない。

本来なら高校生、だ。


けれど彼女は……、3ヶ月前に突如できた、大きな妹は……。


「わかったから……離してって!」


子猫のようにすり寄るミナをなんとか引き剥がし、


「いつも言ってるよね?自転車の近くは危ないんだよ」


やんわりと、注意する。
これもまた、この3ヶ月の日常だ。


「おや、彼方。帰ったね」


「あ、ただいま。
ばあちゃん、腰の調子は?起きてていいの?」


賑やかさに気づいた祖母が縁側から顔を出した。