ふわり。


頬に風を感じる。

ミナの髪の毛が舞い上がり、すぐ近くからシャンプーの甘い香りが漂ってきた。
胸に受け止めた体は、細くて儚げで。けれど、甘やかに柔らかい。

抱きつかれることには慣れたはずなのに……抱きしめる感覚は鮮烈で、ミナが幼い子どもではないことを、改めてカナタに知らしめた。

絡み合う長い指。
抱き支えた、華奢な腰。

カナタを見上げる驚きに見開かれた瞳すら、扇情的で……。
交差する視線から目が離せない。


抱き止める腕に、力が籠もった。


それは、ほんの一瞬の……。


すっと伸びたミナの腕が、カナタの背中を抱きしめ返す。
紅い口角が嬉しそうに引き上がり、輝かんばかりの笑顔で仰ぎ見た。


「おにいちゃん」


礼の言えないミナの、心からの感謝。
大好きな兄への、全幅の信頼。
兄への…………。


バシャン!!


すり寄ってくるミナから腕を外し、カナタはその場に座り込んだ。

冷たい水を腹に感じる。
バシャバシャと荒々しく顔を冷水で洗い、ザブンと頭まで水にひたした。


体が、熱い。


胸の中が熱くて……なのに、心はどん底に行き着くくらい、情けない。