きっと沙綾は今苦しんでいる。

本当はワカメのことを好きなのに、あたしを気にして告白を断った。

そしてあたしとは喧嘩、と言うか一方的にあたしが怒って、それっきり。

顔を合わせづらいに決まってる。

あたし以外に仲の良い友達も居ないままこれまで過ごして来ちゃったから、こういう状況に戸惑ってしまって無理もない。


ふぅ、と小さくため息をつく。


ワカメは黙ったままだけど、きっと沙綾のことを考えてる。

ずっと携帯を眺めてるところを見ると、連絡を取るか取らまいか迷ってるのかもしれない。


あたしは雑誌をめくる手をとめた。

シャカシャカと麗ちゃんの着けてるイヤホンから漏れた音が聞こえる。


担任のまっちゃんが眠たそうに大きなあくびをしながら教室の扉を開けた。

ホームルームが始まる。

ついに沙綾は来なかった。