『なんか、却って納得だわ…』
お姉ちゃんは額を押さえてため息をついた。
『夂葉が必死だった理由がね』
そして何やら意味ありげな笑みを浮かべて私を手招きした。
そして耳元で、
『――――――』
「へっ!?」
驚愕の表情を浮かべる私を、お姉ちゃんは自分から離すように肩をトンと押した。
私はその衝撃で先生の腕の中へ。
『???』
訳が分からない、といった先生の表情。
そんな先生にお姉ちゃんは、
『…私、案外物分かりいいんです』
ふふ、と満足気に笑ってみせて、
『只…何かあった時は全力で夂葉を守りにいきますからね』
少し意地悪く、顔にかかった髪を耳に掛けて、先生の目をじっと見つめた。
そして次にお姉ちゃんの瞳が真っ直ぐ見つめるのは私。
『夂葉、一つ忘れないで。
私は貴女を愛してるわ』
このお姉ちゃんの言葉が、どれ程意味のある言葉か。
どれ程の存在価値を私に与えてくれるか。
そんなの計り知れないくらいで。
「ありがとう…!」
気を抜いたら涙が零れてしまいそうで。
玄関から出ていくお姉ちゃんは少し寂しそうで。
でも、追い掛けたりしない。
―――好きなら、私は何も言わないわ
何も言わない、愛。
受け入れて、優しく見守る愛。
身を退く、愛。
「ありがとう」
見えなくなったお姉ちゃんに、もう一度呟いた。



