鳴海 悠斗。
 この小さな街に産まれ育ち早19年が経った。
 今は大学に通いながら、親父が経営する神社で神宮司になる為の修業をしている。
 『天狗神社』と呼ばれる家は、その名の通り天狗様を先祖代々奉っている神社だ。

 先祖代々受け継がれているのは、神社だけではない。もうすぐ俺の誕生日。
 家の神社は二十歳になると同時に不思議な力を受け継がなければならない。
 それは、長男だけに受け継がれる不思議な力で、どんな力なのか俺はまだ知らない。

 親父に聞いても、祖父さんに聞いてもその力については、教えてはくれない。
 言わば、教えられないくらい不思議な力で、知りたければ継承するしかないと言うことだ。

 物語では、妖怪の中でも優秀な天狗。

 時代が変わり、妖怪達が実在すると俺達は学んで来た。その中で、天狗を奉っているのは代々家の家系だけだ。
 何故家の家系だけが、天狗を奉っているのかを俺は知らないけれど、不思議な力を継承すればそれも少しは分かるだろう。

 俺が知っているのは、力を継承することだけ。その力を持って、何をするのかなんて知らないが、ちょっとはわくわくする。

 子供の頃から大切に育てられて来た俺は、この家にはなくてはならない存在なんだろうと、最近ひしひしと感じていた。