陰陽(教)師

晴明は白うねりを見据えながら陰形印を解いた。

ふわふわ漂っていた白うねりがこちらを向く。

くわ、とその小さな口を開けた。

紫色の吐息が出た。

この吐息が鈴子の身体に変調を及ぼしていたのだ。

【ゆるくとも よもやゆるさず縛り縄 不動の心あるに限らん】

晴明は呪を唱えた。

続けて人差し指と中指を伸ばし、刀印と呼ばれる印を作る。

そして空中に横線を5本、縦線を4本ひく。

いわゆる【九字】を切った。

【オンビシバシ·カラカラ·シバリソワカ】

さらに呪を唱えると、白うねりは空中で静止した。

否、鈴子の目には空中に縛りつけられたように映った。

「不動明王の金縛りの術だ」

上手くいった、と晴明は微笑んだ。

「もう大丈夫なの」

「そうだな」

晴明は鈴子の身体に回していた腕を解き、立ち上がった。

『あ…』

身体を包んでいたぬくもりが消えたことに、一瞬さびしさを感じた鈴子であったが

『ナニ考えてんだあたしは!』

と慌てて首を振った。