「お~い沢村!男が待ってんぞ~!」


男子の声が教室中に響く。


ったく、お調子者!声がデカいんだから。でもね、


それがどうした!


わたしは椅子から立ち上がり、堂々と胸を張って教室から出た。


以前の(わたし)なら考えられないこと。


でも、


でもさ、


「なによ!機嫌とったってダメなんだから!」


「頼むよー」


「ダメなものはダメ!」


「10分、いや、3分でいいからさ!」


懇願する、神木先輩を無視する。


校庭を横切る小柄なわたしを、しつこく口説く。


「じゃ、勉強教えてよ?今度テストだから」


「俺、受験生なんですけど?」


「受験生なら受験生らしく、机にかじりついてなさいよ、空なんか散歩しないで」


「いや、ストレス解消に最高なんだよ!」