基槻も今日から社会人。

美容師の見習いとして働く事になってる。

私が高校の卒業式の前日に、髪の毛を和人さんに切って貰いに行ったら、「何だこのチンチクリンなヘアーは!」と、怒られながらセットされた時に、“美容師になりたい”って、思ったみたい。

基槻は薬指に光る指輪を太陽に反射させながら、左手で私の口を塞いだ。



「煩い…」



…“煩い”?

私は眉間にシワを寄せながら、基槻の左手を叩いた。



「7時50分なのに…。基槻は遅刻だね」



私は嘘を吐いた。



「は――っ!?」



基槻が起きるから。

よくも毎度、騙されるよね;;