すーっと溶けて染み込むように耳に届く歌声に、 俺は顔を上げた。 ソファーで立ったまま歌う姿は、まるで一人コンサート状態だったが、 それさえも絵になっている。 何よりも驚いたのは、その歌声だった。 上手いなんて所の話じゃねぇ。 まっすぐで、 微塵の濁りもなくクリアで鮮明な。 俺の心臓はバクバクと鳴っていて、鳥肌まで立っていた。 こんな歌を唄う奴がいたなんて。 自分の中の、何かが弾けた気がした。 少年の歌声は心の奥の、深いところに触れる。 ヤラれた、と思った。 完全にヤラれた。