「どうしたんですか?! 大丈夫?」

 あくびをしている。目をこすって、またあたしを見る。 

「……別に何も」

「廊下歩いてたら、人が倒れてるのが見えて……」 

「寝てた。ちょっと寝不足で」

 はぁ? 寝てた?

 相手は、むくりと上半身を起こして伸びをする。まるで昼寝から覚めた猫のよう。


「あー……さみ」


 あったりまえでしょうが! いくら今日は暖かいとはいえ、二月に外で! そう言いそうになった。

 ……なんなの? この人。バカなの?

「あ、あたし、びっくりして」

「ごめん、寝てただけ。ちょっと見学してて疲れちゃった」

「見学?」

 安心したけど、ドキドキはおさまらない。

「来年……ってか4月から、ここ入るんで」

 あ、てことは中学生か。

「ここの生徒? おねーさん」

「あ、うん。一年生」

「じゃあ一個上ですね。来年からよろしく」

 そう言ってにっこり笑った。あたしはその笑顔を見て、自分でも分かるぐらい顔がひきつった。

 あんまりにも、魅力的だったから。