月光レプリカ -不完全な、ふたつの-

「父さんと来たわ。ここでこうやって灯台と海、見てた」

「……」

 遠くに空と海の境目。言葉も思いも、空と海の間にある。あたしの思いも、冬海の思い出も。

「もしかしたら、ここは父さんと母さんの思い出の地で、俺を連れて母さんに会いに来たのかもしれない。あの時」

「うん」

 冬海は誰に話しているんだろう。それでも、あたしは冬海の声に耳を傾ける。風が強く吹けは、聞き逃してしまいそうだから。

「寒い時期だったんだ。父さんはもしかしたら……俺とここで……」

 後ろで、子供の笑い声。家族連れだろうか。言葉の続きを待ったけど、聞こえるのは風の音だった。

 お父さんと冬海。ここを訪れる人達が全て明るい気持ちで来るのではないと思う。冬海のお父さんも、愛する人の影を追い求めてここに来たのかもしれない。その手には、小さい冬海の、小さい手。

 広がる草原に、あたし達は腰を下ろした。

「晃が戻ってきたから。あの時から、生きる意味があるって、そう思った。」

「冬海」

「晃が居たから。晃だけ目指して歩いていたんだと思う。いつも、1人で今の部屋に居た時も、忘れたことなんか……無かったから」

 そんな風に思っていたのか。
 まだ遠く過去にやってしまうには近すぎる思い出。思い出したくない事や、言い合いをした事、泣いた事。色んな人が関わった。色んな人が繋がった。みんな、あたし達の為に。