月光レプリカ -不完全な、ふたつの-

「男鹿温泉郷があるから、冬に来た時は温まって行ったらいいよ」

「温泉旅行、大人だわー」

 そう言ったあたしを、冬海と三浦さんが笑った。
 
「西海岸のほう回るからね。ちょっと時間食うけど、せっかくだから海岸線見て行きなよ」

 西海岸……その言葉の響きが不思議。なんだか日本じゃないみたい。
 しばらく行くと、左手に広い広い海が広がった。なんだこれ、見たこと無い景色だ。自分が住む地域から見える海は太平洋。この海は日本海だ。

「わぁ……凄いね! ……綺麗」

 ここに来なければ見られない景色だった。岩肌が荒々しくて、白波が立ち、開けた窓からは潮の香りの風が入ってくる。

「ああなんか、ちょっと覚えてるかも。俺も父さんとここ通ったな」

「思い出した?」

「思い出したっていうか、なんとなく。うん、でも覚えてる。父さんジュース買ってくれたんだ」

 潮風は、記憶を呼び覚ましてくれたのだろうか。あたしは、景色を吸い込むように、深く呼吸をした。
 美しい景色の海岸線を走り、三浦さんの観光案内に頷きながら、ひた走る。海岸線に出てから1時間ほど走っただろうか。

「そろそろ見えるかな。もうすぐ着くよ」

 三浦さんが言った。