「へええ」

 顎のあたりに指をやって、ふんふんと言いながらあたしを見る。

「な、なに」

「ああいうの好きなのか、晃」

「え、ち! ちがうよ!」

 変な企み顔をしながら、梓はあたしを見ていた。

「ま、いいけど」

 なにがいいんだか。無駄にカンだけはいいんだからなぁ。

「きれいな子だね。美少年」

「……梓はマッチョがいいんだよね、いつも言ってるし」

「大きい人がいい!」

 中学時代、バスケをやってた梓は、背が高い。170cmって言ってた。

「応援すっから。がんばれ、アキ」

「なに、違うってば。ただの知り合いっていうか」

「はいはい」


 うまくたしなめられてしまって、あたしは顔が赤くなるのを感じた。
 違う。まだ違う。

 冬海が登っていった階段をもう一度見上げて、あたしは梓の後を追いかけて教室へ向かった。