朝の昇降口は生徒でごった返している。

 また。まただ。そこだけ、冬海の所だけ。あたしは見つけられる。

 友人らしき生徒と言葉を交わし、こちらの階段に歩いてくる。あたしは固まったまま、ずっと冬海を見ていた。

 目が合った事さえ気付かずに。

「あ、センパイ。おはよ」

「お、おはよ。あの……」

 言葉の続きが聞こえなかったのか、冬海は階段を登って行ってしまった。
 昨日の夜の電話のこと聞きたかったのになぁ。

「ちょっと、アキ。いまの誰?」

 梓、目ざとく見てたな今の。

「ああ、うん。1年生。ちょっと知り合いになって」