プシュー。

「っ!」

 音にびっくりして、目を開けた。手が浮いていた。バスが停車し、ドアが開いた音だった。そんなに大きな音ではなかったけど、何か夢を見ていたのかもしれない。大きく聞こえてびっくりしてしまった。
 隣を見ると、冬海がこっちに頭を傾けて、口を少し開けたままで寝ていた。えー、首が痛そう。大丈夫かな……。

 前髪が斜めっていて、睫毛が長くて、じっと見てれば変態だと思われるだろうから、チラ見を2回。本当はもっと見たいけど。お母さんが秋田美人だったんだなきっと。
 昨日は普通に仕事して帰ってきたんだから、疲れているだろう。今日はこうして出かけているし、途中で疲れちゃうだろうな。

「こちら、北上金ヶ崎パーキングエリアで10分間の休憩となります。出発時刻は……」

「んおー……」

 車内アナウンスが休憩を告げると、それに反応して、冬海が唸りながら目を開けた。その瞳があたしを見る。

「着いた?」

 眠そうな顔。少し前まで、同じ高校に居た人だとは思えないくらい。初めて会ったあの時から、雰囲気が変わったな。

「ううん。休憩だって」

 北上金ヶ崎。初めて来た。駐車場には同じようなバスが停まっていたり、車がたくさん。けっこう混んでる。お天気も良いしね。みんな出かけてきたんだろう。

「出ようぜ。なんか食べるもの買うべ」

 朝が早かったし、たしかにお腹が空いていた。朝ご飯でも昼ご飯でもない、微妙な時間だったけど、何か食べたいな。秋田駅にはお昼前に到着の予定。

「朝ご飯食べてないから、俺。腹減った」

「あたしもー。何食べようかな」

 売店でおにぎりとサンドイッチ。お茶とお菓子。そんなものを買う。お父さんの運転で、家族で遠出した時に、サービスエリアでカレーとかお蕎麦とかを食べた思い出があった。食券を買って、席を取ってみんなで食べるんだ。光がカレーをシャツに飛ばしちゃったとか。懐かしいな。