「寒いよねぇ! あがってあがって。ママもパパも居ないから」

「おじゃましまーす」

 良い香りのする玄関を抜けて、美由樹の部屋は2階だ。何回も来てるし、勝手知ったるなんとやらで、ガサガサと買い物袋を提げて、階段を上がる。

「ケーキ! ケーキあるんだよ早く食べようよ」

 美由樹の部屋へ入るなり、梓が叫ぶように言った。待ちくたびれたんですね、子供か。

「飲み物買って来たよ。何がいい? コーラとね、お茶と」

「あ、グラス持ってくるぅ」

 ピンクの部屋着のままの美由樹がウキウキと部屋を出て行った。あたしはペットボトルを全部出して、梓はお煎餅やおかきなんかを自分のまわりに敷き詰めていた。うわヤバい。楽しい。

「3泊くらいしたいかも……」

「着替えだけ取りに行って、ね」

 グラスに注いだジュース。テーブルいっぱいのお菓子。

 くだらない話と、鞄に入れたままの教科書とノート。

 一応、勉強もする予定で、持ってきてあるけど、誰も出さないだろうなぁ。