月光レプリカ -不完全な、ふたつの-

「ありがとー。真っ先に無くなるわこれ」

 3人でがっつく姿が目に浮かぶ。さて、と。準備もしたし、そろそろ出よう。

「じゃあ、行ってきまーす。明日、夜までには帰ると思うし」

「1週間とかじゃなければ、延泊も可です。連絡よこしなさい」

「はーい」

 玄関へ向かう。飲み物は美由樹の家へ向かう途中で、コンビニで買おう。

「晃」

 靴を履いている時、お母さんにまた声をかけられた。

「ん?」

「気分転換して、楽しんでらっしゃい」

 エプロンを外しながら、お母さんが言った。出かける準備をするんだきっと。

「元気に、なってらっしゃい」

 今日は、お気に入りの茶色いブーツ。少しだけヒールがある。お母さん、あたしが落ち込んでいることをきっと気付いてる。たぶん。

「……うん」

 ちょっと天然で、なんかあんまり深いことを考えてなさそうなうちのお母さん。こういう時の言葉って、ぐっと来る。胸がなんだか、温かくなった。

「いってきます」

 ブーツで出た外は、まだ寒かった。