月光レプリカ -不完全な、ふたつの-

「……いえ、もうマミ先輩には関係無いです。中尾先輩だって……」

 許すとか許さないとか、そういうことじゃなくて。こんな風に人を好きになるこの人は、悲しいなと思った。マミ先輩は。

「中尾くんにも、最低だって言われて。結局彼は離れていっちゃった」

 眼鏡の奥の瞳は、悲しいのか諦めなのか、少し潤んでいた。

 身から出た錆とはいえ、後悔してもしきれないだろう。そこらへんは、あたしと似ている。マミ先輩は、中尾先輩が言うように最低だったかもしれないけど、それは、中尾先輩を好きだったから。


「もうすぐ卒業、ですね。もう会いませんね。友哉と仲良くやってください」

 頭には来ていた。だけど、ここでマミ先輩と争っても何も解決しないことは、いくらあたしでも分かる。なるべく、角が立たない様にそうい言った。

「友哉くんとは、もう会ってないから」

 会ってない……。

 2人の関係が取引の上に成り立っていたことは、友哉が言ってたけれど。

 人を落としいれ、それで満足だったんだろうか。

 
 マミ先輩と友哉の間には、お互いを思うどんな気持ちがあったんだろう。



「あたし達どっちも、バカだったから……」

 マミ先輩は眼鏡をちょっと触った。廊下は寒い。

「ごめんなさい。ちゃんと言いたかったから……」

 そう言うと、マミ先輩は静かにゆっくりと去っていった。悲しい後姿。