「アキ、なんか……聞いたんだけど。噂で……」

「ん?」

 梓だ。

 朝、だるそうにしてる生徒や元気いっぱいの生徒の声が響く教室に入ると、彼女があたしのところに来た。

「その……冬海くん、学校辞めたんだって?」

 どこから聞いたのか。こういう話題って伝わるのが早い。

「誰から聞いた?」

 梓はうつむいてしまった。責められてると思ったのだろう。

「違うよ、責めてるんじゃなくて。そういうんじゃないんだ」

「……吉永先生に。無理やり聞いた。友達だし教えてくださいって……」

 世話焼きだなぁ。梓のこういうところ、好きだ。

「うん。噂じゃなくて、本当に辞めたの」

「……なんで」

 全てを話すわけにはいかなかった。冬海の名誉のためにも、黙っていないといけないことがあった。