「ああ……噂もあったからな。知ってたよ。それもあるから自主退学するって」

 生徒というよりも、学校にバレていたんだ。

 きっと、あたしよりも先生は先に知っていたんだ。だから、冬海のことに心を砕いていた。今更分かった。

 退学の話だって、きっと止めたに違いない。

 あたしだけ、知らなかったんだ。


「昨日の電話、すみませんでした。感じ悪くて」

「あ? ああ」

「冬海は元気でしたか? 退院の時」

「早めの退院で、あと通院だけどな。飯も食ってたし大丈夫だろ」

 退院の時の様子なんか聞いて、どうするんだ。退院する時も、学校を辞める時も、あたしは何もできない。なんて無力なんだろう。

「おばあさんの話と、お前の話するとな……あいつ泣くんだよ。あんまり話せなくて」

「……」

 本当に、なんて非力で無力。冬海の涙を拭うこともできなかった。

「守ってやれなかった。悪かった」

 吉永先生が、低い声で言った。

「……あたしも、冬海を守れなかった……」