小走りで遠ざかる中尾先輩の背中を見ていた。

 好きなヤツ。嘘は嫌いだ。でも認めるにはまだ、と心が言ってる。

 好きなヤツ。

 聞かれた時に頭をよぎったのが冬海だったから。あの、きれいな顔がよぎったから。

 段々と夕方になりつつある校内。遠くから吹奏楽部の練習の音が聞こえてきた。


 その中で、あたしは立ち尽くしていた。