月光レプリカ -不完全な、ふたつの-

「どうやって帰ってきたのよ」

「ほふく……全身で」

 冬海は自分で言ったことにウケて、ふふっと笑っているけど、あたしはもう胸が苦しくて涙をこらえられなくて。

「センパイ、泣くな、よ」

「冬海、死なないで」

 なんか、死んじゃうんじゃないかと思った。傷だらけの顔で微笑むから。痛みと苦しさと優しさの混ざった微笑みは、見ていて辛いだけ。

「死なねぇよ」

 冬海は目を閉じて言った。

 床に落ちている冬海の左手を握ると「いって……そこ」と顔が苦痛に歪んだ。ぷっくりと腫れてしまっている。

「冬海、手が凄い腫れてる」

「……折られた」

「え?!」

「順番に折るとか言われて……小指、折れてんだ」

 もう、やめてよ……!

「大丈夫だ……心配しないで。……腹とか蹴られてるけど頭は平気。そんなに心配無いと思う」

「だって冬海!」

 気を張って喋ってるのが分かる。心配かけまいとして、力を振り絞ってる。

 呼吸が浅いし唇が震えてるもの。分かるもの。大丈夫なわけない。