月光レプリカ -不完全な、ふたつの-

「はい」

 出た!

「あ、先生。幸田ですけど」

「おお、どうだった。園沢……」

「先生いまどこ! 来てほしいんだけど!」

「なんかあったのか」

「いいから、すぐ来てください! アパート!」

「分かったすぐ行く」

 電話を切って、鞄の中のハンカチを取り出す。シンクにタオルがあったから、何に使ったのか分からないけどそれも濡らした。

 なんであたしの近くの人は血を流すケガばかりするの……。


「いっ……」

 傷に濡れたタオルを当てると、冬海が弱々しく震える。なんなのよ……なんでこんなになってるのよ。

「我慢して……腕は? お腹とか背中とか」

「……う」

 言葉も出せないほどなのか、冬海は床に倒れたままで苦しそうにしている。