月光レプリカ -不完全な、ふたつの-


「こ、転んだ」

「転んでこんなにならないでしょ! どこ、どこが痛いの」

「……ぜんぶ」


 全部って! 救急車を呼ぼうか、どうしよう!


「救急車とか……呼ぶなよ」

「だって、酷い傷!」


 どうしよう。ケータイを握ったまま考える。

 冬海のこの姿、事故にでも遭ったのかもしれない。打ち所が悪いかもしれないし。

 ……そうだ。

「吉永先生に連絡するから」

「やめ……」

「だって冬海が死んじゃう! 言うこと聞いて!」


 震える手でケータイを取り出す。
 電話帳に先生の電話番号は入っていないと思い出して、またポケットを探る。あった、パンダメモ。

 ダイヤルして発信する。早く出て、先生……!