月光レプリカ -不完全な、ふたつの-


「園沢と、変わりなくつき合ってるのか?」

 いきなり、吉永先生が聞いてきた。聞かれたくないことだったけど。

「変わりなくっていうか……分かりません」

「なんだ分かんないって、自分達のことなのに」

 だって分かんないんだもん……。


「先生は、彼女とつき合ってて、別れそうになったことある?」

「なんだ、別れそうなのか園沢と。今の高校生って……」

「質問に答えてくださいよー!」

 その聞き方大人な返しで嫌だ。自分のことは話さないで逆に聞き返す。子供扱いしないで欲しいです。

「俺的には、別れたりしないで欲しいけどな。なんつーか」

 少し言い淀んで、先生は道路に目をやる。ヘッドライトの川。夕方のラッシュだ。電車もきっと混んでいるだろう。

「支えてやれよ、園沢を」

「先生……あっ」


 駅にちょうど入った時だった。制服のポケットのケータイが振動した。メールじゃない、電話だ。

「なんだ」

「電話……冬海」

 画面には冬海の名前。電話だった。メモを見てかけてきたのかもしれない。