夏休みが終わって、またいつもの登校風景と授業の生活。

 朝、冬海と待ち合わせすることも無く、そして見かけない。駅で待ってれば来るかもとか、教室に行けば会えるとか、そんなことを考える余裕も無かった。


 誰も居ない学校の花壇。用事も無いのに時々来るようになった。

 放課後、青い空が赤く染まって、そして暗くなるまで居た時もある。

 少し前までは隣に冬海が居た。同じように過ごしていたのに。まだ隣に居るような錯覚に陥る。

 夏の終りの日差しに温められた地面は、陽が沈んでもじっとりと温かい。そこに座り、あの甘い時間を1人で思い出している。


 戻れないのかな。
 もう、あたしは冬海の隣には居られないのかな。あたしを嫌いになった? 


「もう俺にかまうなよ!」

 冬海のあの時の声と目。今思い出しても悲しくなってくる。涙が出てくる。

 なんで、どうして、売春なんかしてるの? どうしてあたしに何も言ってくれないの? 

 こんな風に考えるのは自分勝手だって分かってるけど、何も言わないんじゃ……冬海の気持ちの先っぽを捕まえられないよ……。


 手のひらを見つめて、目を閉じる。


 この花壇で座っていれば、冬海が来て「センパイ何やってんの?」って笑いかけてくれるんじゃないかって、思っているんだ。


 まだ、手を伸ばせば、まだ……。