「……もうあたしと友哉は関係ない。あたしは冬海が好きなんだから」

「晃!」


 友哉に腕を掴まれた。「離して」とあたしはその逞しい手を解く。

 友哉の手は冬海と違っていて、そしてあたしが覚えている友哉の手だった。

 あの頃に戻りたいと思わないのは、今が大切だから。冬海が大切だから。


「戻れるわけないよ……遅いよ友哉。あたしはもう」

 足元に落ちたペットボトルをのろのろと拾い上げる。壁に立てかけてあった買い物袋も。両手が塞がる。


「もうあたし達に関わらないで……ごめん」

 もう少し長いワンピースを着てくれば良かった。屈んだりするのに気を使って、鬱陶しい。友哉の顔を見ないで「バイバイ」と言って歩き出した。

 顔なんか見られなかったから。

 ガサガサと紙袋の音が情けなくて、今すぐに走り出したい。友哉が追いかけて来られない所まで。でも、どうやら彼はあたしを止めるのを諦めたようで、追いかけては来なかった。

 少しためらったけど、駅に向かうことにして、重い足を出す。